2007年の回顧と2008年の展望










 

 各 位



 2007年も大変,慌しい年になりました。当シンクタンク、そして、世界遺産総合研究所にとって,この一年の活動を回顧してみると,大変,意義深い年であったように思います。

 一つは,ニュージーランドのクライストチャーチ、中国の上海、成都、峨眉山、九寨溝、厦門、泉州、福州で宿泊したホテルの部屋から、国内でも、羽田、関空、広島の各空港のエアーポート・ラウンジ、宿泊するホテル、フリー・スポットなどからです。パソコンが手放せない毎日ですが、時間を有効に使える様になりました。21世紀の大学は、サイバー大学の様な大学が主流になると予測しています。サイバー空間でも教授と学生、また、学生間のコミュニケーションは自在、フェース・ツー・フェイスのオフ会や懇親会などもありますから、「通学」することの意味が改めて問われてくる、現状の就学(修学)スタイルを革新する国際的な大学に発展することが期待されます。

 二つは、大型クルーズ船「パシフィック・ヴィーナス」で、日本を2周したことです。1周目は、神戸港−釧路港−能代港−金沢港−福江港−宮之浦港−神戸港、2周目は、横浜港−宮之浦港−金沢港−能代港−網走港−横浜港というルートです。乗員200名、乗客400名、さながら、動くホテル、別荘の様でした。いずれも、日本の世界自然遺産地、知床、白神山地、屋久島に海からアプローチするのがテーマです。船上での講演会は初めてでしたが、大変、貴重な経験になりました。次の目標は、クルーズ船での世界一周です。アレキサンドリア、ピレウス、ミコノス島、ヴァレッタ、、チビタベッキア、カンヌ、バルセロナを巡るエーゲ海、地中海クルーズも夢の一つです。

 三つは,第3回世界自然遺産会議への参加でした。第1回目は、屋久島のある鹿児島県、第2回目は、白神山地のある青森県で開催されましたが、地方自治体が主体の行事なので、民間人としては、なかなか参加しにくい会議でしたが、今回の中国の四川省峨眉山での会議は、門戸を開放してくれました。それだけではなく、民間研究者の発表の機会を与えてくれ、“The Sustainable Development of World Natural Heritage−Importance of World Heritage Education−”と題して、スピーチを行いました。また、この機会に、ユネスコ世界遺産センター、IUCN、中国建設局をはじめ、カナダ、米国、ニュージーランド、ドイツ、それに、日本から参加の行政関係者、学者、研究者と数多く知り合いになれたのも収穫でした。フィールド・トリップでの、世界遺産「峨眉山と楽山大仏」(複合遺産)、「九寨溝」(自然遺産)の視察も、世界遺産の研究者冥利に尽きるものでした。教材がまた一つ、二つと増えた様な気が致します。

 四つは,2003年のユネスコ本部(パリ)での第27回世界遺産委員会、2004年の中国・蘇州市での第28回世界遺産委員会、2005年の南アフリカ・ダーバン市での第29回世界遺産委員会、2006年のリトアニアのヴィリニュス市での第30回世界遺産委員会に続いて、ニュージーランドのクライストチャーチでの第31回世界遺産委員会にオブザーバーとして出席できたことです。今回は、島根県の「石見銀山遺跡」の世界遺産登録が実現しましたが、いろいろ勉強になった世界遺産委員会でした。

 また,レセプションや会議の合間に各国の関係者と知り合いになれたのも大きな収穫でした。これまでの世界遺産委員会で会った人、それに、他の国際会議で会った人、ユネスコ本部、IUCN、ICOMOSを訪問した時に会った人、メールでコミュニケーションのあった人、日本の文化庁や環境省などの世界遺産担当者、それに、NHKなどマスコミ関係の人など多様でした。

 五つは、新聞社、テレビ局、ラジオ局などマスコミ関係からの取材が大変多くなったことです。これまでは、電話やメールによる取材がほとんどでしたが、フェース・ツー・フェースの取材が増えてきました。フォーカル・ポイント、或は、リソース・パースンとして、今後も正確な情報把握に努めていかなければならないと考えています。また、世界遺産委員会から帰国後の7月13日、NHK松江放送局から『ふるさと発「検証 世界遺産への道〜島根・石見銀山遺跡〜」』という生番組へのスタジオ出演依頼があり、大変緊張しましたが、良い経験になりました。

 六つは,全国で活発化している「世界遺産登録運動」の勉強会や研究会への出講です。萌芽段階のもの、暫定リスト入りをめざし具体化しつつあるものなど、熱意、熟度、合意の度合いはまちまちです。世界遺産登録をめざし地域のソフト面、或はハード面の環境整備を行っていくことは、すなわち、真の地域づくり、美しいまちづくりに通じるものであることを自ら再認識している次第です。今後は、古墳などの考古学遺跡、産業遺産、土木遺産、20世紀の都市・建築分野、文化的景観、瀬戸内海地域、「海のシルクロード」などの交易・文化の道など研究領域を広げてまいります。

 七つは,国際交流関係です。今年は、前述した通り、四川省と福建省を中心に、中国に2回行きました。「中国の世界遺産研究」は、私のライフワークの一つになりそうです。また、派生的に中日など多国間プロジェクト「海のシルクロード」の研究にも着手してまいります。今年は、福州や泉州に行きましたが、来年は、浙江省の寧波なども訪ねてみたいと考えています。

 八つは,生涯学習センター、公民館など公共施設、新聞社系の文化センターや懇話会、国際機関、シンクタンク、行政、商工会議所、青年会議所(JC)主催の「世界遺産講座」、勉強会、研究会等への出講です。2007年は、「海外の世界遺産」と「日本の世界遺産」に力点を置き、単発の1回ものから、自然遺産と文化遺産の両方を網羅する5回シリーズ、8回シリーズとプログラムの内容を多角化しました。今年は、当方が「世界遺産講座」を開設後、通算100プログラムを達成、参加人数は、プログラム毎に多少はありますが、通算5000人〜10000人にもなるでしょうか。何事も一つ一つの積み重ねですから、私は、決して手抜きはしません。こうした自らの経験を通じて、社会教育分野、学校教育分野、職業教育分野を通じた「世界遺産教育」のあるべき姿を確立していきたいと考えています。

 九つは,JTB(東京)など旅行会社とのコラボレーションです。2006年は「海外の世界遺産」に力点を置き、文化の多様性とテーマ性を重視しました。2007年は「日本の世界自然遺産」に力点を置き、大型クルーズ船「パシフィック・ヴィーナス」での船上セミナー、そして、知床、白神山地、屋久島に海からアプローチするというものでした。日程の都合等で、全てに同行することは出来ませんが、それが何故に世界遺産として登録されたのか、その物件固有の「顕著な普遍的価値」、歴史的・文化的な価値、また、その物件が抱える問題点や課題、脅威や危険などを明確にし、理解を深めてもらうことが私どもの役割だと考えています。

 十は、当シンクタンク主催の世界遺産検定「世界遺産習熟・理解度テスト」を2006年からスタートさせ在宅受験を主体とした実験(?)を繰り返しています。概ね全国的な広がりを見せ、順調に推移しています。将来的には、インターネットによる受験システムを検討中です。また、特定会場でのペーパー方式もリクエストがあれば、実施していきたいと考えています。

 以上が、2007年の当シンクタンク、そして、世界遺産総合研究所の主なトピックスです。

 私たちの仕事は,グローバルな視点に立っての地道な努力と長い時間を要するものです。しかしながら,「継続は力」で,社会に役立つことも多くなってきました。また、社会的な認知度も次第に高くなり、自由国民社発行の「現代用語の基礎知識2008」にも執筆の機会を与えて頂きました。テレビや新聞などのマスコミを通じて、世論に大きな影響を与えることもある様なので、言論等には気をつけたいと、改めて気を引き締めているところです。

 2008年は,果たしてどんな年になるのでしょうか。戦争のない平和な地球社会にしていかなければならないのは自明の理です。

 2008年も時間の許す限り、時流を読みつつ、世の中に役立つシンクタンクの舵取りを世界遺産総合研究所を中心に展開していきたいと考えています。長期的には30年,中期的には10年を視野におき,これまでに蓄積してきた知識と経験の集大成と活用、応用発展がテーマになります。

 また、国内外のどこの大学になるかはわかりませんが、安易な方法ではなく、名実ある教育学分野の「博士号」の取得に向けての準備に着手したいと考えています。

 引き続きご支援をお願い致します。

                                        2007年12月30日


                                          古田 陽久



 



















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