2004年の回顧と2005年の展望










 

各 位



 2004年も大変,慌しい年になりました。当シンクタンク、そして、世界遺産総合研究所にとって,この一年の活動を回顧してみると,大変,意義深い年であったように思います。

 一つは,2003年のユネスコ本部(パリ)での第27回世界遺産委員会に続いて、中国の蘇州市で開催された第28回世界遺産委員会にオブザーバーとして出席できたことです。これまで,議事録等の記録で,会議の様子を知るしか方法がありませんでしたが,世界遺産の登録がどのように議論され決まるのか,その様子を実際,自分の目で見,耳で聴くことを通じて,世界遺産条約の意義を改めて認識することができました。

 また,レセプションや会議の合間に各国の関係者と知り合いになれたのも大きな収穫でした。昨年の世界遺産委員会で会った人、それに、他の国際会議で会った人、ユネスコ本部、IUCN、ICOMOSを訪問した時に会った人、メールでコミュニケーションのあった人、マスコミ関係の人など多様です。

 二つは,日本ユネスコ国内委員会からの推薦により、ユネスコ北京事務所からモンゴル、中国、北朝鮮、韓国、日本の北東アジア5か国の「世界遺産教育に関するカントリー・スタディ」を行うにあたり、日本におけるフォール・ポイントに指名されたことです。日本の学校教育、社会教育、職業教育など生涯教育において、世界遺産が教育にどのように生かされているか、或は、どのように生かすべきかをユネスコに提言していくことになります。

 三つは,日本の大学での特別講義でした。ウズベキスタンの国立芸術アカデミー、中国の西南師範大学(重慶市)での経験はありますが、
日本の大学では初めての経験になりました。広島女学院大学の生活文化学部の学生を対象に「世界遺産の多様性と文化的景観−自然環境と人間の営み−」という演題で話をしました。また、名古屋市の中学校で、総合学習のテーマの一つとして選ばれた「世界遺産」について「古都京都の文化財」を事例研究の題材として選び話をしました。7月の猛暑の中、蒸し暑い体育館でした、皆、静かに話を聞いてくれました。

 四つは,全国で活発化している「世界遺産登録運動」の勉強会や研究会への出講です。なかでも、印象に強く残ったのは、山形県の「出羽三山」です。5月、9月とこれまで余りご縁がなかった山形県へ二度も行くことになりました。お役に立てたという喜びは何物にも代えがたいものです。また、庄内平野など久方ぶりに出会った日本の原風景には心洗われる気持ちになりました。山菜、岩がき、庄内柿、ラ・フランスなど内海では味わえない食文化にも触れることができました。また、地元の新聞を見られて、お便りを下さった方々など人情味にも感動しました。
山形県の「世界遺産育成プロジェクト」で、「出羽三山」が山形県の代表として選ばれますことを祈念しています。

 五つは、新聞社などマスコミ関係からの取材が大変多くなったことです。これまでは、電話取材がほとんどでしたが、北海道新聞、朝日新聞、北陸中日新聞などの記者がわざわざ訪問してくれました。フォーカル・ポイント、或は、リソース・パースンとして、今後も正確な情報把握に努めていかなければならないと考えています。

 六つは、6月の三度目の蘇州、9月の初めてのインド、12月の初めてのトルコへの旅でした。インドでは、アグラ城塞、タージ・マハル、ファテーブル・シクリ、デリーのフマユーン廟、デリーのクトゥブ・ミナールと周辺の遺跡群の5つの世界遺産、トルコでは、イスタンブールの歴史地区、ギョレメ国立公園とカッパドキアの岩窟群、ヒエラポリス・パムッカレ、トロイの考古学遺跡の4つの世界遺産を見る機会に恵まれました。なかでも、トルコの2つの複合遺産であるギョレメ国立公園とカッパドキアの岩窟群、ヒエラポリス・パムッカレは、感動的でした。インドやトルコも自分がいままで抱いていたイメージを超える懐深い民族の歴史と文化に接することができました。

 七つは、5月に約9年間住んでいました瀬戸内海と宮島が一望できる西区井口台のマンションの11階から一つ山を越えた佐伯区美鈴が丘緑に事務局と共に移転したことです。ここは、もともと東京から帰ってきて5年間住んでいた戸建で、美鈴が丘高校から歩いて約4分のところです。最寄りのJR の駅も新井口駅から西広島駅(広島駅から2つ目 この駅からタクシーで12〜13分)になりました。

以上が当シンクタンク、そして、世界遺産総合研究所の国際的な関わりが進展していくなかでの2004年の主なトピックスです。

 私たちの仕事は,グローバルな視点に立っての地味で地道な努力と長い時間を要するものです。しかしながら,「継続は力」で,社会の為に役立つことも多くなってきました。

 2004年も,小出版ですが,下記の「世界遺産シリーズ」が12タイトル,「誇れる郷土シリーズ」が1タイトル、新シリーズの「世界の文化シリーズ」が2タイトルの合計15タイトルの出版物を発行することが出来ました。ご協力頂いた各位に感謝の意を表したいと思います。


 2005年は,果たしてどんな年になるのでしょうか。戦争のない平和な地球社会にしていかなければなりません。2005年も出来うる限り,時流にそったテーマを選択し,世の中に役立ち信頼される名実あるシンクタンクの舵取りを世界遺産総合研究所を主力に展開していきたいと思います。長期的には30年,中期的には10年を視野におき,これまでに蓄積してきた知識と経験の集大成と後継者の育成も大きな課題です。引き続きご支援をお願い致します。



古田 陽久



 



















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