
| 自然遺産の登録基準と文化遺産の登録基準を併せ持つ複合遺産を特集 |
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【目 次】 ■ユネスコ世界遺産の概要 ユネスコ世界遺産が準拠する国際条約 世界遺産分布図 ■世界遺産に登録されている複合遺産 ギョレメ国立公園とカッパドキア (Goreme National Park and the Rock Sites of
Cappadocia) ■複合遺産関連の情報源 国際機関(含むNGO) 大使館・観光局・政府関係機関 各種団体・研究機関等
■日本の自然環境と文化財 日本の自然環境保全に関する法体系 コラム(1) 複合遺産について ■索 引
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| 複合遺産について |
複合遺産(Cultural and Natural Heritage)とは,自然遺産と文化遺産の両方の登録基準を併せもち,自然と人間との共同作品ともいえる伝統的な生活様式を反映している遺産で,世界遺産条約の本旨である自然と文化との結びつきを代表するものである。 最初から複合遺産として登録される場合と,はじめに,自然遺産,あるいは,文化遺産として登録され,その後,もう一方の遺産としても評価されて複合遺産となる場合がある。 はじめに自然遺産として登録され,その後文化遺産としても評価されて複合遺産となった物件は,文化的・歴史的外観・自然環境をとどめるオフリッド地域(マケドニア)(1979年は自然遺産,1980年文化遺産追加),トンガリロ国立公園(ニュージーランド)(1990年は自然遺産,1993年文化遺産追加),リオ・アビセオ国立公園(ペルー)(1990年は自然遺産,1992年文化遺産追加),ウルル・カタジュタ国立公園(オーストラリア)(1987年は自然遺産,1994年文化遺産追加)の4物件。最初に文化遺産として登録され,その後自然遺産としても登録されて複合遺産になった物件はこれまでにはない。 複合遺産は,2001年4月現在,上記の物件も含め23物件ある。複合遺産として初めて登録された物件は,ティカル国立公園(グアテマラ)で,1979年第3 回世界遺産委員会ルクソール会議で登録された。最近では,オカシュランバ・ドラケンスバーグ公園(南アフリカ)が,2000年第24回世界遺産委員会ケアンズ会議で登録されている。国別にみると,中国(泰山,黄山,峨眉山と楽山大仏,武夷山),オーストラリア(カカドゥ国立公園,ウィランドラ湖沼群地帯,タスマニア森林地帯,ウルル・カタジュタ国立公園)の各4物件を筆頭に,トルコ(ギョレメ国立公園とカッパドキア,ヒエラポリスとパムッカレ),ギリシャ(アトス山,メテオラ),スペイン(イビザの生物多様性と文化,ピレネー地方−ペルデュー山(フランスと2国にまたがる)),ペルー(マチュピチュの歴史保護区,リオ・アビセオ国立公園)がそれぞれ2物件ずつ登録されている。他の国は1物件ずつの登録で,ニュージーランド(トンガリロ国立公園),フランス(ピレネー地方−ペルデュー山(スペインと2国にまたがる)),マケドニア(文化的・歴史的外観・自然環境をとどめるオフリッド地域),スウェーデン(ラップランドの貴重な自然−サーメ文化),アルジェリア(タッシリ・ナジェール),マリ(バンディアガラの絶壁(ドゴン人の集落)),南アフリカ(オカシュランバ・ドラケンスバーグ公園),グアテマラ(ティカル国立公園)。合計14か国,23物件が登録されている。 世界遺産条約の特徴の一つは,それまで,対峙するものと考えられてきた自然と文化を,相互に依存するものと考え,共に保護していくことにある。それは,自然遺産と文化遺産の両方の価値を併せ持った,この複合遺産が象徴的なものといえる。 人間と自然環境との共同作品とも言える景観で,文化遺産と自然遺産との中間的な存在である文化的景観(Cultural Landscapes)は,文化遺産の分類に含められているが,複合遺産とは異なる。 複合遺産に登録されている物件の登録面積は,サハラ砂漠の中央部にそびえる8,000,000haもあるタッシリ・ナジェール(アルジェリア)の台地から,ギリシャ中央部のテッサリア地方,ピニオス川がピントス山脈の深い峡谷から現われテッサリア平原に流れ込む地点にある375haのメテオラ(ギリシャ)まで,その規模は様々。 複合遺産は,顕著な普遍的価値を有する自然環境と文化とが見事に融合したもので,山岳,公園,森林,台地,フィヨルド,砂漠,断崖,岩塊,奇岩,湖,温泉,生物多様性などの自然環境と考古学遺跡,都市遺跡,集落,宮殿,聖地,修道院,教会,寺院,磨崖仏,岩壁画,化石などの文化財や文化的景観との組み合わせで,きわめて多様である。 日本には,現在,屋久島,白神山地の2つの自然遺産,法隆寺地域の仏教建造物,姫路城,古都京都の文化財(京都市 宇治市 大津市),白川郷・五箇山の合掌造り集落,広島の平和記念碑(原爆ドーム),厳島神社,古都奈良の文化財,日光の社寺,琉球王国のグスク及び関連遺産群の9つの文化遺産の合計11の世界遺産が登録されているが,複合遺産に登録されている物件はこれまでにはない。 2000年11月に,文化庁は,今後5〜10年以内にユネスコの「世界遺産リスト」に登録する予定の物件として,既にノミネートしている「古都鎌倉の寺院・神社ほか」(神奈川県),「彦根城」(滋賀県)に加えて,「平泉の文化遺産」(岩手県),「紀伊山地の霊場と参詣道」(三重県・奈良県・和歌山県),「石見銀山遺跡」(島根県)の3件を追加する旨を発表した。 これらの物件は,世界遺産としての恒久的な保護管理措置などユネスコ世界遺産への登録要件が整い次第,外務省を通じてユネスコ世界遺産センターへ推薦書が提出される運びとなる。 なかでも注目したいのは,「紀伊山地の霊場と参詣道」(和歌山県・奈良県・三重県)。紀伊山地の高野,熊野,吉野・大峯は,古代以来,自然崇拝に根ざした神道,中国から伝来し,わが国で独自の展開を見せた仏教,その両者が結びついた修験道など,多様な信仰の形態が育んだ神仏の霊場であり,これらの霊場を結ぶ紀伊路(中辺路,小辺路),大峯道,伊勢路などの参詣道(巡礼路)と共に広範囲にわたって極めて良好に遺存し,更には,それらが今なお絶えることなく地域の中に息づいている点において文化的景観を有する比類のない文化遺産といえる。 登録遺産の範囲としては,和歌山県側では,高野山町石道,慈尊院,丹生都比売神社,丹生官省符神社,金剛峰寺,金剛三昧院,徳川家霊台,熊野古道小辺路がある高野地域,熊野古道中辺路,熊野本宮大社,熊野速玉神社,熊野那智大社,那智山青岸渡寺,那智大滝,那智原生林,熊野古道小辺路がある熊野地域,三重県側では,熊野古道伊勢路,奈良県側では,吉野・大峯,大峯道,熊野古道小辺路などが含まれる見込みである。 この地域は,自然の背景として,自然公園法で,吉野熊野国立公園(奈良県・和歌山県・三重県)と高野竜神国定公園(奈良県・和歌山県)に指定されている。 吉野熊野国立公園(昭和11年2月1日指定 面積59,798 ha) は,吉野山から大峰山,大台ヶ原までの水成岩の秘境と峡谷のある山岳地帯,南紀の海岸,北山川,熊野川の一帯で,古い歴史と伝統が残る吉野山は,史蹟と桜の名所,大峰山は,山岳宗教の修験道の道場として有名。大台ヶ原は標高1500mにおよぶ古生層の隆起準平原で,仏経ヵ岳,大台ヶ原,大杉谷には,ブナ,トウヒなどの原始林,それに,オオヤマレンゲ自生地(天然記念物),ユキノシタ自生地(天然記念物)が広がり,カモシカ(国の特別天然記念物),ツキノワグマ,ホンシュウジカなどの動物も生息しており,大台山系は,国設鳥獣保護区にも指定されている。 また,那智権現の神体である那智の滝(国の名勝)は,高さ133mと落差が日本一を誇る瀑布であり,華厳の滝,袋田の滝と共に「日本三名瀑」の一つで,水源には,那智原生林(国の天然記念物)が広がる。 高野竜神国定公園(昭和42年3月23日指定 面積19,198ha)は,和歌山と奈良の県境の紀伊山地の一部が公園になっており,弘法大師が開基した山岳仏教の聖地で,120余の伽藍,僧房のある高野山(1,100m)をはじめ,白口峰,護摩壇山へと続く。 この公園一帯の一部には自然林が残っており,特に,高野山周辺には,スギを主とする自然林やコウヤマキ,マツ,スギ,ヒノキ,モミ,ツガのいわゆる「高野六木」の原生林,それに,サル,カモシカ(特別天然記念物)が生息している。 また,意外に知られていないのが,大台ヶ原・大峰山(Mount Odaigahara & Mount Omine)は,1980年に白山,志賀高原,屋久島と共にユネスコの生物圏保存地域(世界94か国,393生物圏保存地域)に指定されていることである。 「紀伊山地の霊場と参詣道」は,既にユネスコ世界遺産に登録されている「サンティアゴ・デ・コンポステーラの巡礼道」(スペイン並びにフランス)と同様,文化遺産であることには相違ないが,周辺の自然環境も未来に継承すべき貴重な自然遺産として価値が高いので,文化遺産と自然遺産の両方の登録基準を併せもつ複合遺産の可能性も併せて検討していくべきだと思う。 <文責 シンクタンクせとうち総合研究機構> <ご参考> 「世界遺産ガイドー世界遺産条約編ー」(シンクタンクせとうち総合研究機構 発行) 「世界遺産Q&Aー世界遺産化への道しるべー」(シンクタンクせとうち総合研究機構 発行) 「世界遺産フォトスー写真で見るユネスコの世界遺産ー」(シンクタンクせとうち総合研究機構 発行) 「世界遺産事典ー754全物件プロフィールー2003改訂版」(シンクタンクせとうち総合研究機構 発行) 「世界遺産データ・ブックー2004年版ー」(シンクタンクせとうち総合研究機構 発行) |
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